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世界最大の翼竜展

公式:http://www.asahi.com/yokuryu/
日本初の翼竜をテーマにした展覧会。世界最大の翼竜ケツァルコアトルスを目玉とし、「恐竜キング」とのタイアップ企画を行うなど子供の興味を引く一方で展示は大人を満足させ、僕のような古生物好きをうならせる素晴らしい内容だった。導入は人類による翼竜の発見から。コナン・ドイルが小説「失われた世界」で当時解明されていなかった翼竜の特徴や生態を見事言い当てていたという逸話は全然知らなかったなあ。続いて系統図による恐竜でも鳥でもない翼竜という生物の位置付けの説明、進化の様子を示すため三畳紀から年代順に並べられた翼竜の化石。そして翼竜の飛行については、その進化の起源、骨や飛膜の構造、コウモリやムササビ等の空飛ぶ動物との比較、空気力学的視点など様々な角度から検証されていた。頭骨のCTスキャンから脳の解析をしたり、足跡化石から歩行モデルをCGで描いたりと最新の研究成果も積極的に発表していた。恐竜だけでなく翼竜でも胚化石や新種を続々と産出している中国の化石、一部分ばかりで属・種レベルの分類に至っていないが発掘例はけっこうある日本の化石も興味深かった。翼竜の絶滅については、鳥類の繁栄により生活圏を奪われ衰退し大型種のみとなった翼竜白亜紀末の大量絶滅事件を生き残れなかった、という説は化石の産出状況とも符合し非常に説得力の高いものだと思った。
…とまあ、小難しい話はさておき、本展覧会最大の見所であるケツァルコアトルスは全身骨格の復元と生体復元モデルが会場のど真ん中に宙吊りで並べられていて、それはもう圧巻。




アステカの神「ケツァルコアトル」の名を与えられたその巨体は実に体長10m・翼開長10m。これを超えそうな化石もいくつかあるものの、現時点では世界最大の翼竜であり、地球の歴史上で最も大きな空を飛ぶ生き物。小型飛行機なみの威容、そのシルエットはコンコルドを彷彿させる。生体モデルを見ると子供数人ぐらい乗せても平気で飛びそうな気さえしてくる。ヒクイドリみたいな着色もナイス(※色は化石に残らないため全て想像の世界)。これだけの図体で推定体重はどうやら70kg程度だったらしいからびっくり。翼竜という生物がいかに自身の軽量化に優れ、空への適応に長けていたかを証明している。まあさすがにコイツが平地からいきなりバッサバッサと飛び立つのは無理があり、ある程度助走をつけて離陸したとされてる。アホウドリみたく崖から飛び立っていたかもね。



知名度ナンバーワンの翼竜プテラノドン(名前は「歯のない翼」を意味する)。本展覧会では脇役的ポジションだった。



ドラえもんで初めてその名を知った翼竜・ズンガリプテルス。右側の写真のように地上では翼をたたんで四足歩行していた翼竜が多くいたようで、足跡化石にもその証拠があるらしい。



トサカが印象的なタペヤラ。チョコラザウルスで立体化されたよね。当時は「タペジャラ」だったけど発音は「タペヤラ」が正しいのかしら。



こちらもチョコラザウルスで立体化されたアンハングエラ。歯がステキ。



三角定規みたいな頭骨のトゥプクスアラ。ブラジル・セアラ州で見つかった翼竜には先住民トゥピ族の言葉が名前に用いられていて、タペヤラは「年寄り」、アンハングエラは「古い悪魔」、そしてトゥプクスアラは「精霊・使い魔」を意味する。いずれもその異形に似合う名前だと思う。


毎回出来の良いカタログも購入。期待以上の満足を与えてくれた、見せ物としても学術的にも非常に価値ある催し。ケツァルコアトルスの骨格&生体復元は見ておくべき。全国巡回イベントなので近くに来た時がチャンスだぜ。